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「山南さん!?その姿!」
「土方さん!皆!千鶴がどこにも―千鶴!!!」
平助が山南の姿形に驚いた時、千鶴を探していた桜もやってきて、広間の様子を目にした。
「千鶴を離して!山南さん!」
桜は山南に今まで向けた事の無い、鋭い視線を向ける。
「やるしかねぇのか……」
悔しげに呟き刀を抜いた永倉に続き、全員が刀を抜く。
まさに今、山南に全員が斬りかかろうとした時―
山南と桜の視線が合った。
するとその瞬間、山南の目にわずかに理性の色が戻った。
それに気付いた桜は
「待って!!」
と全員を止める。
「私……は……」
山南は呆然と呟き、千鶴から手を離して、その場に倒れた。
「げほっ、げほっ!!!」
「千鶴!」
咳き込み、倒れ込む千鶴に桜が駆け寄る。
そして他の幹部で山南を取り囲む。
「気を……失っているのか?」
「……」
左之の言葉に斉藤がゆっくり近付き、確認する。
「そのようだ」
「何で山南さん……若変水なんて……!」
平助が信じられないというように呟く。
「くそっ!!!!!」
土方が叫び、激しく柱を拳で叩いた。
いつも冷静沈着な彼らしからぬ行動に皆、驚く。
しかし土方は、一呼吸置き
「とりあえず、原田と永倉で山南さんを医務室へ運べ。雪村の事は桜に任せる。運ぶのに平助。手伝ってやってくれ」
指示を受けた四人が頷く。
「後の奴は、他の隊士達がここら辺に来ていないか見張って、近付かせるな」
全員が頷く。
そして指示に従い各自、動き出した。
「何だってこんな事に……」
悔しげに呟いた土方の言葉を耳にした桜だが、千鶴の介抱をするために自室へ向かう事にした。
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