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「おい」
朝になり、土方が二人の元へやって来た。
「土方さん!!」
「山南さんは!?」
「落ち着け」
あくまで土方は冷静だ。
「峠は越えた……。とりあえず今は落ち着いている」
「そっ……かぁ~!」
「良かった……」
平助は心から安堵し、桜は涙目になって山南の無事を喜ぶ。
「こっちはどうだ?」
「あぁ。千鶴ならただ気を失っただけみてぇだ」
「そうか」
わずかに土方の声に安堵の色が含まれる。
しかしすぐに態度を改めて
「それから、今から幹部で話し合いをする」
「伊藤さんがいねぇのにか?」
伊藤は出張へ行っていた。
「いねぇからだ。今後の山南さんについて話し合わねぇと」
「あ……」
桜は、はっとした顔をする。
伊藤には羅刹について何も言っていない。
そのため山南が羅刹になった今、伊藤にどうやって山南の事を隠すかを考えなければいけない。
「広間に来い」
あんな事があったすぐ後に、出来れば行きたくないが、桜と平助は土方に続いた。
桜は部屋を出る前に、千鶴に心配の目を向けたが、静かに襖を閉めた。
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