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西本願寺に新選組が移動してからしばらく経った。
そんな中で様子がおかしい人物が一人いた。
「ねぇ」
「……」
「ねぇってば」
「……」
「平助!!!!」
「うおぉっ!」
耳元で桜が大きく叫ぶと、平助は本当に驚いていた。
「ったく。何ぼけっとしてるのよ。土方さんが呼んでる」
「あ、あぁ。分かった」
―最近平助がおかしい。
誰と話していても上の空だし、落ち込んだようにため息をつく姿もよく見る。
新選組で一、二を争う元気な彼がこんな風になっているのは初めて見る……。
と桜は思っていた。
「行くか……」
と平助は呟き、腰かけていた中庭の椅子から立ち上がった。
「そう言えば、何の話し合いなんだ?」
「分かんない。とりあえず幹部全員に声をかけてるみたいだから重要な事なんじゃない?」
「ふぅん」
「ま、伊藤さんは例の如く、いないみたいだけどね」
そっけなく桜が言う。
伊藤も一応は幹部なのだが、他の幹部達とは折り合いがつかないため、話し合いに参加する事が今では無くなっていた。
代わりに、最近ではよく外に出ていき、自分に従う隊士達に勉学を教えていたりしているようだった。
「そうか」
どこか気落ちしたような声で平助は返事をする。
「……」
そんな様子に桜は引っ掛かるものがあったが、触れない事にして、広間へ急ぐ事にした。
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