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「……」 人影は桜の方へ無言で振り返った。 その表情は無表情なのだが、どこか怒りを含んでいた。 「あ…あれ?一、もしかして…怒ってる?」 「……」 男は無言で睨み付けた。 『怒ってるよ―!!』 桜は心の中で尋常ではない程に焦りまくっていた。 桜を睨んでるこの男は桜と同じ新選組の斎藤一。三番組組長をしている。 普段は冷静沈着で優しさも持っているのだが、怒らせると新選組の中で一番怖い、と桜が思っている人物だ。 「あ、あのさ。もしかして勝手に屯所出た事怒ってる?」 恐る恐る、桜は心当たりを白状していく。 「……」 しかし斎藤は無言だ。 「じゃ、じゃあ、刀を差さずに女の着物だから?こんな暗い道を一人で歩いてたから?鼻歌で自分の場所を知らせるかのように歩いてた―痛い!!」 話の途中で桜は斎藤からげんこつを食らった。 「全部だ」 「はい……」 げんこつを作ったまま、斎藤は一言言った。 その言葉に桜は大人しくするしかなかった。 『もう!痛い~。一って意外と手出るの早いんだよね』 げんこつを落とされた桜は頭を押さえながら思っていた。
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