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少年はそう息を荒げながら、ズボンのベルトに手を掛けた。
「……っ!!」
少女は少年の腕が自分から離れた瞬間を見逃さなかった。
その刹那。先ほどの無抵抗が嘘だったかのように、少女は右腕を振り上げその拳で少年の鳩尾を貫いた。
「ぐえっ!?」
少年の身体はそのまま水平に数メートル、まるでピッチングマシンから放たれた白球のように吹き飛び、電信柱に激突した。
少女は起き上がりながら、口元に不敵な笑みを浮かべた。
「あはっ。大きくなったね、あなたの『セイギョク』。これなら万単位はくだらないかな?」
そう零しながら少年の傍らまで歩を進めた少女。いつの間にか、少女の右手には刃渡り10センチほどのフォールディングナイフが握られていた。
「ひ、ひぃっ!? く、来るなぁぁぁっ!!」
当初とは正反対になった、少年と少女の立場。少年は少女の持つナイフに目を丸くし、そのブレード部を焦燥に満ちた表情で見据えた。
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