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やがて、少女は少年に馬乗りになった。少年の目には、少女のスカートから覗く太ももなどは映っていなかった。光もないのに何故か鈍い輝きを発する得物に吸い寄せられるかのように、視線を彷徨わせることなく、恐怖の対象を捉え続けるだけだった。
「すごく綺麗……これが限界みたいだし、もう、いいよね?」
少女の瞳は少年の胸辺りに向けられた。
恐怖に怯え続け言葉にならない叫びを発する少年を尻目に、少女はその細い指で少年のブレザーとワイシャツのボタンを1個ずつ外していった。瞬く間に外気に晒される少年の胸部。そのちょうど鳩尾の部分に、少女はフォールディングナイフを宛がった。
ひんやりとした刃の感覚に、少年の恐怖はいよいよ最高潮に達する。
「……お、お、俺が悪かった! だっ、だから……命だけは勘弁してくれ!」
少年の必死の願いは、少女の耳に突き刺さるように届く。だが、少女は口元に微かな笑みを浮かべるだけだった。ナイフを手放す気配のない少女。そして、彼女は震える少年に向かって言い放った。
「――もう二度と、こんなことをしないようにするだけだよ?」
次の瞬間。夜の街に、少年の叫びが響き渡った――。
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