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莉乃が持ってきてくれた差し入れ、もといお菓子やジュースなどをテーブルに広げながら、僕はテレビの電源を入れた。黒い箱の中では、バラエティ番組の司会者が大口を開けて笑っている。莉乃はというと、テレビには目を配らせずにどことなくそわそわとした雰囲気だった。
「莉乃?」
昔は僕よりも先にテレビに噛り付いて笑っていたはずなのに、今日は少しおかしかった。思わず声を掛けてしまう僕。莉乃は我に返ったように僕に向き直ると、無理矢理作ったことが数瞬でばれてしまいそうな微笑を浮かべた。
「へ? どうしたの?」
「いや、何だかいつもと違うなーって思って。まあ、何年も経ってるんだし莉乃も少しは落ちついたのかな」
それは僕の本心ではなかった。昨日ここに越してきたときの莉乃や今日の朝の莉乃を見るに、彼女の根本的な部分は変わっていないように思った。明るくて、快活で、可愛くて……成長した身体くらいかな、変わったのは。
「ええっ、わたしは大翔の知ってるわたしだよ? 何かおかしかったかな?」
「ううん。その言葉聞いて、安心したよ」
「ふうん、なら良かった。ほら、食べよ?」
言うと、莉乃は自らが持ってきたポテトチップをおもむろに口に運び始めた。うん、いつもの莉乃だ。
そうは思うも、何だか妙な違和感を覚えてしまう自分がいた。
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