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翌日。学校に向かった莉乃と僕は通学路の途中で登校中の緋香里と出合った。
「やっほー、緋香里ちゃん!」
「おはよう、女王」
緋香里に後ろから声を掛けると、彼女は肩を跳ね上げて振り向いた。
「……もう、開口一番「女王」はないでしょっ!」
「いやあ、小学生の頃の癖が抜けてなくてさ」
「誰かが聞いてたらどうするのよ、全く……」
緋香里は前髪をかき上げながら、僕を軽く睨みつけて溜め息をついた。そんな様子に、莉乃は僕らを見つめころころと笑う。
「大丈夫だよ緋香里ちゃん。わたしたちもう高校生だし、そんなこと噂する人なんていないって」
「だといいんだけどね。とにかく山瀬、金輪際「女王」は禁止! いいわね?」
彼女の剣幕に押された僕はしぶしぶ「参りました」のポーズを取って両手を挙げた。
それからしばしの昔話に花を咲かせていると、僕らの通う霞崎東高校はもうすぐだった。
桜の花がはらはらと舞い落ち、春特有の風流を醸し出している。正門まで辿り着いた僕ら3人は、そのまま真っ直ぐに昇降口へ向かおうとした。
そのとき。
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