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もう何年も前、まだ小学校高学年だった頃まで住んでいた町に再び戻ってくるのは、懐かしい反面僅かばかりの恥ずかしさもあった。
「ふう……」
僕は引越しの業者のトラックが去っていくのを目で追いながら、肩の力を抜いて一息ついた。元の家から持ってきた家具類は全て運び終わり、後は細かい道具を整理するだけだ。
「……まさか、ここに戻ってくることになるなんてね」
誰に向けて言ったわけでもない。けれど、僕の口からはそんな言葉が漏れていた。
引っ越してきた霞崎という街は、僕が小学5年生まで住んでいた場所だ。この家も、当時のそのままの形で建っている。
今回の引越しは、父さんが僕に言った一言から始まった。
『大翔。お前ももう高校生2年生なんだから、自活しろ。前の家でひとり暮らしだ!』
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