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「それは良かった。あ、今日からまたこの家で暮らすことになったよ」
「えっ? えと……おじさんとおばさんは?」
莉乃は辺りをキョロキョロと見回し、僕の両親の姿が見えないことに首を傾げた。
「ああ、それは……」
僕はそんな彼女に、事の顛末を手短に話す。と、莉乃は「納得しました」とばかりに頷いた。
「じゃあ、ずっと一緒?」
「うーん、その辺はよく分かんないかな。でも少なくとも高校を卒業するまでは一緒だと思うよ」
「やったあ! あ、高校は?」
「霞崎東(かすみざきひがし)に行くよ。何とか編入試験に受かったからさ」
僕の言葉に、莉乃の顔は更に明るくなる。
「高校まで同じなんて……嬉しくて死んじゃいそうだよ」
「いやいや、それはオーバー過ぎるよ」
嬉しすぎて涙が溜まっている様子の莉乃の瞳。莉乃は昔から、色々な表情を持っているやつだった。彼女の辞書に「ポーカーフェイス」なんていう文字は存在しないらしい。笑うときは腹が痛くなるほど笑い、泣くときは涙が涸れるまで泣く……そういうやつだ。
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