氷の街

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***  女が去ってすぐ、ノエルは部屋に戻っていた。 (お姉さまは何で慌てて出て行ったのかしら……)  そう考えながら、ベッドの上で転がっていた。召使いが食事を持ってきていたが、手を付けられずにいた。  時を報せる鐘が1つ鳴り、2つ鳴り、そして3つ。真夜中を報せる時、突然扉が開けられた。 「ノエル、起きてるか?」 「ん……何? セント兄さま」  2つ目が鳴ってから眠っていたノエルは、眠い目を擦りながら起き上がる。来訪者はノエルの兄、セント=アルマスだった。 「ちょっと来いよ、多分面白いモノが見れるぜ」  そう言う兄に連れられてノエルは螺旋階段を登り、三階に上がる。ノエルは普段絶対に入るな、と言われていた扉が開いている事に気づいた。 「兄さま、あれ……」 「叔父上と母上が上がって行ったんだよ。 あと、知らない人が何人か。 きっと神様に嵐が止むようにお願いしてるんだ」  ノエルは兄に手を引かれ、禁じられた扉をくぐり、こっそりと階段を登る。一度も開かれたところを見たことがなかったのだが、何故か埃1つ落ちていない。 (あら、私いつの間に寝巻きに着替えてるわ)  ノエルは食事が下げられていたのを思い出し、召使いが着替えさせてくれたのだろうとぼんやり考える。気がつけば階段の最後の段まで来ていた。その先にあったのは、祭壇のある小さな部屋だ。  そこには5人の知らない人々と、蒼い杖を持つ白ローブを纏った叔父、そして白の巫女服姿で蒼い剣を手にする母が居た。母は力強く、しかし流れる様な舞を踊っていた。叔父が突然何かを早口で唱え、母の舞いはより激しくなっていく。母の美しい舞いに、2人とも見入っていた。  その時、ノエルは気付いてしまった。祭壇の上にあるモノが人間である事に、その祭壇に寝転がっている人間がこちらを見ている事に。  そしてその人間がよく見知った女、ノエルが姉と慕う女であった事に。  ノエルと女の視線が合った時、女は微笑み、口を動かした。刹那、剣が振り下ろされ──
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