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トゥルルルルッ
トゥルルルルッ
内線が鳴る。
いつもの時間にいつもの声。
「お嬢様、おはようございます。ご起床のお時間です」
「おはよう。二宮。もう起きて支度も調っておりますわ」
「お食事はすぐにお召し上がれますが」
「いま、いきます」
アンティークでそろえられた、自室を出るとメイドの美佐があわててかけよってくる。
「お、お嬢様。もうお支度なさったのですか!?」
「自分で用意もできるし、服も着られるわよ。髪もとかせるし。」
「でも、でも……」
美佐が上目使いで美玲を見やる。
「大丈夫。美佐にきちんとやってもらったことにしておくから」
美佐の顔がぱぁっと明るくなる。
「自分でやってみたいのよ」
私は、自嘲気味に笑った。
ペルシャ絨毯の敷きつめられた、階段をおりると、執事の二宮が出迎える。
「おはようございます、お嬢さま。本日は午後5時まで授業でございます。5時にはお迎えの車が正門のロータリーでお待ちしております。6時には日本舞踊のお稽古がございますので、授業後すぐにお帰りくださいませ」
「わかりました。」
二宮の顔をしっかり見て返答する。
会話をする際は、きちんと顔を見て話せ、という父の教えだ。
人の心をつかむことを幼いころからたたきこまれている。
「お二階でお父様がお待ちですよ」
フッと二宮が笑顔をみせる。
「お父様がっ!?帰っていらしたのね!?」
自然と笑みがこぼれる。
「ドバイでの商談がまとまり、一時ご帰宅のようです。昨夜、深夜にご帰宅され、お嬢さまとのご朝食を楽しみにしておられましたよ」
「ありがとう、二宮。早くお父様のお顔が見たいわ。三ヶ月ぶりですもの!!」
急いで階段をおりる。
早足でリビングに向かっても5分はかかる。
なんせ、清宮家の屋敷は960坪。
土地は2600坪。屋敷のほかに、警備室、お茶室、使用人の住居などがある。
とはいえ、私の行動範囲はせまいので、普段はあまり広さは気にならない。
しかし、こんな時は、だだっぴろい家がうらめしくなる。
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