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「お帰りなさいっ!!お父様!!」
「美玲!!また一段ときれいになって」
強面で有名な、清宮誠一郎の目尻がだらしなくたれさがる。
「ふふふ。ありがとう、お父様。お父様がエステティシャンを厳選してくださってるおかげですわ」
私には、高校生のころから専用のエステティシャンがいる。
週に4日、フェイスもボディもピカピカにしてもらう。おかげで、肩こりやむくみとは無縁だ。
私がエステティシャンを選ぶことはない。
常に父が決める。
「いーや、素材が良くなければエステも無駄なのだよ。おまえの美貌は、麗子ゆずりかな?」
誠一郎が麗子にウィンクをする。
リップサービスが自然にでるのも、ビジネス仕込みだろうか。
「そうね。ふふふ」
母親の麗子のきれいに塗られた唇が光る。
「さ、美玲も学校がありますから、早く朝食をいただきましょう。林シェフが腕をふるってくださいましたのよ」
清宮家の食事は全て3人のシェフがまかなう。
麗子がシェフを選ぶ。麗子は、清宮夫人でありながら、自分でレストラン経営も行っている。
麗子は経営者であり、シェフではない。
だから、美玲は麗子の手作り料理を食べたことがなくても、おかしいとも、悲しいとも思ったことはない。
久しぶりの親子三人の食事は楽しかった。
しかし、誠一郎は多忙で、午後にはまた海外へ行ってしまう。
麗子もまた、新しいレストランのオープンで、しばらく顔をあわせる時間がなさそうだ。
「では、行って参ります。お父様も、お母様も、お体に気をつけてお仕事がんばってくださいませ」
「ああ、美玲も清宮家の跡取り娘としてしっかり学ぶのだぞ」
「はい、お父様。では、行って参ります」
黒塗りのベンツに乗り込み、ニコニコと笑う誠一郎と麗子に手をふる。
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