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この日、午後になって急に風が強くなり、激しい雨が降り出した。
まるで台風みたいな暴風雨。
天候に負けないくらい激しい嵐のような出来事に、私は世間知らずって言葉を初めて理解した。
※※※
「えっ!?三住さんが事故!?」
三住さんは清宮家の運転手さん。私が小さい頃によく遊んでもらった記憶がおぼろげにある。
「経緯と状況の説明をしてくださる?」
震える心を無理矢理おしこめ、冷静なふりを装う。
お父様、お母様がお仕事でいらっしゃらない今、清宮家をまとめるのは私だと思って振る舞わなければ。
もちろんそんな力は私には無く、実質まとめているのは二宮なのだが……
大学を卒業すれば私も何かしら事業を任されるはずだ。
このまま、二宮に頼りきりではいけない。
「奥様を空港にお届け後、帰りの高速で風に煽られて壁に接触したようです。幸いスピードが出ていなかったためむち打ち程度の軽傷です。」
「そう……良かった……」
体に力がぬける。
「ただ……」
「ただ?」
「三住さんはこの後お嬢様のお迎え予定でした。この暴風雨ですと車は危険と判断し、大ベテランの三住さん以外の運転手を本日は帰してしまいました。本来ならば私がお迎えすべきなのですが、屋敷の使用人達に指示を出さねばならず……」
いつも完璧で感情のはかることの出来ない二宮の声が少し困惑している。
その様子がなぜか嬉しくて笑みがこぼれる。
「大丈夫よ。ハイヤーを使うわ。学園のハイヤーなら信頼出来るでしょう?」
「……申し訳ございません、お嬢様。必ず美佐とお帰りください。美佐には私から連絡しておきます」
「ふふ。毎日、行きも帰りも美佐と一緒ですわ。それに、私も来年で卒業ですわよ?」
電話の向こうで二宮のフッと笑う。
「そうですね。しかし、くれぐれもお気をつけて」
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