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エピソード1、春の大捜索
ビル街から出てきた電車が休日の午後をゆっくり過ごそうという人たちを大量に吐く駅。
少しだけ都心を外れたこの駅から歩くこと十分弱。
昼間でもほんのり寂しさがただよう商店街から一本右に曲がると、そこにそれはあった。
多少古めかしいドアに、薄汚れた壁の二階建の建物。
ビルというにはみすぼらしい風貌に、申し分程度に備え付けられた看板にはこう書いてある。
藁家
最近地元の八百屋のおっちゃんから聞いた何でも屋だ。
小規模ながら良質の店らしい。
信憑性は曖昧だが、悪い噂は聞かない。
まさに、知る人ぞ知る、といった感じだ。
私がそんな曖昧な噂を伝ってここにいるのは、ある理由があってのことだった……。
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