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これは、余所者である『アリス=リデル』が来る前、今の役持ちたちの前の役持ちたちがいた世界の話である。
「今日もいいお天気ね」
黒いエプロンドレスを身にまとった少女は大きな庭を見ながら言った。手には彼女ともう一人、写っている写真がある。
少女はうっすらと微笑み、写真立てを撫でた。
「今日はどこにでかける?・・・いつもの湖畔公園なんていいかもしれないわね」
少女はそっと立ち上がる。すると、何かが視界にチラついた。
「・・・?ウサギ、さん?」
正確には、ウサギの耳をつけた男、だ。
「・・・不審者!?」
「あぁ、ようやっと会えましたね!」
「・・・いや、不審者!」
少女は身を翻し、家に向かって走って行く。それに驚いた男はその後を追う。
「待って下さい!僕はあなたを迎えに来たんです!!」
「やめて!私は今から・・・きゃあ!!」
追いついた男は少女を抱き上げる。
そしてそのまま―。
「きゃあああ!!!!!」
「穴へ飛び込みましたよ!さ、行きましょう!」
少女の手から写真立てが離れる。写真立ては落ちていく少女たちとは反対に上へ上へと消えていく。
「待って!!!」
「待ちませんよ。僕は、あなたを幸せにしたいんですから」
「いやああああああ!!!!」
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