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「その娘を城に・・・?」
「ええ。彼女は僕たちの・・僕の大切な人ですから」
「ほう」
「・・・・・・・・」
大広間の中心、そこにアーテルはいた。視線を少し上げると、そこには長い髪を肩で流し、真っ赤なドレスを身にまとった女性が座っている。その視線は、蛇をも殺しかねないものに感じた。
「貴様、名は?」
「えっと、あ、アーテル、です。アーテル=マリエ・・・」
「・・・ん?アリスではないのか?」
「は、はぁ・・・」
「彼女はアリスではありませんが、大切なものを持っている人です。今、この国に必要な方だ」
「・・・そうか。アーテル、わたくしはヴェレッド。このハートの城の女王だ」
「は、はい!」
「敬語はやめて、わたくしを友のように扱い。そうしなければ、首をはねてしまうからね」
「は、はい!!、じゃなくて、分かったわ!」
「いい子だ。客室はどこでも好きな場所を使うと良い。それから、たまにわたくしの茶会やチェスに付き合っておくれ」
「う、うん」
アーテルは視線の先で無邪気に笑うかわいらしい少女のような微笑みの女性に、少し安堵していた。
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