ダークの国のアリス

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目を開くと、やわらかな布が体にあたる。 体を起こすと、そこは眠る前に入り込んだベッドで、アーテルは少し溜息をついた。 (夢、じゃなかったのね・・・・) ぼんやりと周りを見渡すと、自分の部屋よりも一回り以上大きな部屋が目に入る。 ピンクやハートの装飾があちこちに見受けられる。 「んん・・・・」 「・・・・ん?声?」 ふいに部屋の中から声が聞こえた。アーテル以外この部屋には存在しないはずなのだが、間違いなく声がした。 「だ、誰・・・っ!?」 「ん、寒っ」 もそもそと布団が動く気配がした。 アーテルはゆっくりと自分の布団をめくった。するとそこには見覚えのない男が眠っていた。 「・・・だ、誰っ?」 「寒い・・・寒い・・・寒い」 「・・・・」 「さ、む、い」 男はゆっくりと起き上がり、アーテルが持っていたかけ布団を思い切り引っ張っていった。 「あ、とられた」 「んん・・あったかい」 「・・・とりあえず、出よう」 もそもそと布団から出ると、後ろの布団の中にいた男がゆっくり起きてきた。 「うん・・寒い」 「え。布団をとっておいて何を言っているんだ」 「・・あれ?お前・・・」 「・・えっと、あなた誰?」 「・・・あ。ヴェレッドのお気に入り」 「・・・・・・・・」 男は布団から出て、ゆらゆらと立ち上がりアーテルをつかんだ。 「あの」 「俺はグリフォンのクリーメ。クリーメ=クロワ」 「なんでここにいるの。一応、私女だから勝手に入ってこられるの困るんだけど」 「・・・何でだ?ヴェレッドはそんなこと言わないぜ」 「私は女王様とは違うの」 「・・・・・」 「とりあえず」 「っ!!!!?」 アーテルはクリーメの膝裏に蹴りを叩き込んだ。 クリーメは痛みに耐えながらアーテルの肩をつよくつかんでいる。 「変態、変質者!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 「は?え!?」 「女の部屋に断りなく入るなんて最低だわ!訳わかんないことばっかり言って!いい加減部屋から出て行きなさい!!!」 「ちょ、俺はヴェレッドにあいさつに行けって言われてここに・・・」 「起きてからにしろ!!」 「俺だって眠かったんだ」 「寝てから来い!!!」 再びクリーメの膝に蹴りを叩き込む。痛みに耐えられなくなったクリーメはその場にうずくまってしまった。
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