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「シュヴァリエ・・・なんであなたがここにいるんですか」
「何で、って、そりゃあ、部下の稽古が終わったから、部屋に帰ろうと思って。これから書類整理をしなきゃいけないからね」
「そうですか、じゃあさっさと自分の部屋なり墓なりに還ってください」
「墓って。それ、グリフォンのとこにでも行けっていうのか?」
「喰われてしまえ」
「ウサギの方がきっとうまいよ」
「僕はかよわいうさぎさんなので、そんな恐ろしいことできませんよ。屈強なあなたの方がきっとご馳走です」
「人間の肉って、すんごく不味いらしいよ?たっぷり味付けしなきゃいけないから、グリフォンも面倒なんじゃないかな?」
「たっぷり味付けすればとてもおいしくなりますから、努力は惜しまないんじゃないですか?・・・って、アーテル!どこに行くんですか!!?」
「う、バレた・・・」
アーテルはこっそりその場から去ろうとしたが、すぐさまラパンにその腕をつかまれてしまった。
「・・・女の子?」
「彼女は」
「ラパン、女の子にひどいことしたらダメだろう?騎士として、それは見過ごせない」
「人の話を聞きなさい」
「あんたがね」
「彼女はこの世界の『大切な人』です」
「・・・え?」
「僕が担当していたんですから、間違いないです」
「・・もしかして、アリスなのか?」
「いいえ。アリスではありません」
「・・・そうか」
「それでも、彼女はアリスと同じ『心』があります」
「・・・っ」
「・・・・?」
アーテルには二人の会話の意味が全く理解できなかった。
しかし彼女は理解したいとも思わなかった。すぐ、この場から離れたいとしか考えていなかった。
「ごめんね。俺はこのハートの城の騎士、シュヴァリエ。よろしく」
「え!?あ、あぁ・・私はアーテル=マリエよ」
「ところで君、余所者なんだよね?どこか滞在する場所は決めたのかい?」
「え?ま、まだだけど・・・」
「それなら、この城に滞在しないか?ここなら、ん~・・・ラパンもいるけど、できる限り俺も守ってあげられる。ね?」
「・・・うん。そうする」
「本当ですか!?嬉しいです!!」
「くっつくな!」
「ぐは!!!」
そうしてアーテルは、二人に促され城の中へ入って行った。
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