第一宵 空谷の跫音

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半ば強引にそれを押し付けた砂原尾先輩は、満足そうに自分の病室に戻っていった。何を企んでいるのかは知らないが、本人がいいならそれでいい。 ようやく静けさが戻ってきて一息吐いた所に、 「……こんにちわ」 「え? ……臨終か」 なんともう来ないと思っていた臨終が入ってきた。 「今……ちらっと女性を見かけたのですが、ご友人ですか?」 「誰でもいいだろ、お前には関係ない」 「そのお花もあの人が持ってきたんですか?」 「だから誰でも……ん? ちょっと待て。この花は今日お前が持ってきたんじゃないのか?」 その臨終は制服にスクールバッグ。言うまでもなく学校に行っていたようだ。なら今朝から花を置きに来れる訳があるまい。 では誰が置いたのだろうか?しかも看護師さんの言葉だといつも来ていたと言うし、恐らく女性。そんな人間は臨終と砂原尾以外にいないはずなのだが。 「……今日の授業分の解説しますね」 そして昨日の今日でも、臨終はノートを開いた。
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