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すると明里ちゃんは微笑みながら小さな手の平を僕の頬っぺたに添えた。
「アタシも……しょーらいのだんなさんはカナちゃんがいい」
「あ……うん、ありがとう……」
当時まだまだガキだった僕は、その時の明里ちゃんが妙に大人びていすぎている気がした。
顎を撫でるように触っていた右手が、徐々に上に侵食していく。
怖じ気すら感じた頃、明里ちゃんは手を離して僕から距離を置いた。
「アタシね、欲しい物があるの」
そして突然明るく話しかける。しかしその表情とは裏腹に、声のトーンが急に沈んだ。
妖艶な雰囲気に棘が加わり、少し僕は尻込みする。
「欲しい物って? 僕があげられる物なら……」
「うん。カナちゃんじゃなきゃダメなの」
小首を傾げながら微笑む明里ちゃんは、怖いけどやっぱり可愛かった。
「それなら……で、欲しい物って何なの?」
「たくさん欲しい物はあるけど……それ」
何か奥ゆかしささえも感じる表情で、僕を指差した。
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