…過去話等_

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▼存在意義と自己犠牲_ これは、とても深い闇夜の日のお話。 「父上、僕は何故生まれてきたのでスカ?」 「……はい?」 驚いた、この子がいきなりそんな事を言うなんて。 存在意義を考える年になったのか、と関心しつつ言葉を繋げる。 「いきなりどうしたのです?貴方は貴方、それでいいじゃないですか」 「しかし父上見て下サイ。僕は神に造られたと書いてありマス」 どこで手に入れたのか、分厚い事典のような本を捲りながら見せてくる。 「僕は神が自慢するほどの怪物だと。後に神に食べられる運命にあると。 僕は何でスカ?何故こんな大きな姿になったのでスカ?神のお腹を満たす為の食料なのでスカ?」 「……いいですかイェソド、まずその本を置きなさい。」 「人間達に嫌われるために生まれたのでスカ?草木を食い荒らし、生物達の命を奪う為に造られたのでスカ?」 一度疑問に思ってしまうと、納得するまでそれしか目に入らない。 この子の悪い癖だ。 「イェソド、私の声を聞きなさい。」 「ちょっと力が強いだけで化け物と言われるのも、沢山食べるだけで化け物と言われるのも、全て神が仕組んだ事なのでスカ?」 「イェソド」 優しく手を握るとビクッと微かに反応がある。 少し……震えている。 「貴方が何故生まれてきたか、何の為にこうして此処にいるのか、それを知るのがそんなに大切な事ですか?」 「分かりまセン」 これもこの子の悪い癖だ。 他に何かを伝えたいはずなのに、それを無理矢理抑え込んでしまっている。 →
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