▼神森参加キャラ_…準備中

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▼壌雫_ちょっとした過去話_ 『あの泥田には近付くな。 近付いたら最後、引きずり込まれてしまうぞ。』 『なんて恐ろしい姿なのかしら、あそこには化け物が住んでいる』 『うちの子供が下駄を落としたら、危なく落とした下駄ごと引きずり込まれそうになったのよ』 『おぉ怖い怖い、そんな化け物いなくなればいいのに』 『いなくなればいいのに』 存在を嫌い、消えろと言う願いが強く、いつしかこの姿は人々には見えなくなっていた。 これでいい。 これでいいのだ。 嫌なものは見なければいい。 いないと信じればいい。 ふと空を見上げると、小さな鞠がこちらに向けて飛んできた。 「ねぇ、そんな所で何してるの?」 赤い花柄の着物を着た1人の少女がこちらを見ていた。 「…お前……儂が見えるのか…?」 「見えるって…何言ってるの? そんなところにいたら危ないよ?」 「危ない…?」 「お母さんが言ってたの、そこには化け物がいるって。 近付いたら引きずり込まれちゃうって。」 ……化け物。 そうか、この少女は儂がその化け物だと…気付いていないのか。 「……これはお前の鞠か?」 「うん!ありがとうお兄ちゃん!」 「…危ないぞ、早く戻った方がいい」 「えー…私ここが好きだからまだいたいの!」 少女は"桜"と言った。 それから毎日毎日、泥田の前に現れるようになった。 妖怪だと…化け物だと知らずに。 「でね、その時お父さんったらー…」 「……桜はいつも笑顔だな。」 「え?そう?お母さんがね、いつも笑顔でいれば自分も周りも幸せになるって言ってたんだ!」 聞けば彼女の父親は病気で亡くなり、幼い妹と弟もいたのだが、父親と同じ病気に掛かり短い一生を終えたのだと。 今は母親と2人で暮らしており、父と妹・弟達は、この村の中で一番大きい桜の木の下に眠っていると言う。 「…この村の桜は、昔から綺麗だった」 そんな桜の下に眠っているのだから、彼らはきっと幸せだろう。 「泥さんは優しいね」 「………優しい…?」 「言葉は少ないけど、なんだかあったかいなぁって!」 →つづく
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