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学校帰りの電車の中、私たちは手をつなぎながら窓の外を見た。
この車両の乗客は、少し離れた所に座る私たちと同じ制服を着た女の子が一人だけ。
カタン コトン
『なあ、俺といてつらくないの?』
ふいに、彼は窓の外を見たまま私に問いかけた。
私は彼のほうに視線を向けた。その横顔はどこか自嘲気味で、私はギュッと彼の手を握る手の力を強めた。
カタン コトン
『つらくないよ』
『俺は、』
『……』
『きっとお前のことを明日も忘れるんだろ?』
『……たぶんね』
カタン コトン
『俺がお前なら、耐えられない』
ーー忘れられて、悲しくないかと問われれば、否とは言えないと思う。
『それでも私は、傍にいられるだけで幸せだからいい』
『……』
『一緒に学校に行って、一緒に帰って、一緒に遊びに行って。笑ったり嬉しかったり、おはようとか、おやすみとか言い合って』
『……』
『他の子たちと何が違うの?違わないでしょ』
『……』
私の力以上に、彼の私の手をつかむ力が強くなった。
『記憶のない俺が言うのもなんだけど……たぶん俺、お前のことめちゃくちゃ好きだよ』
カタン コトン
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