第5章 全人類人質計画

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 俺たちが日本への帰路についている最中、ラミエルはコンパクト型スパコンで例の円盤を遠隔操作し、円盤をある場所の上空に瞬間移動で突然出現させた。  場所は南米アルゼンチンの草原。ピエール・オージェ観測所の上空だ。この観測所は世界最大の宇宙線観測所で、宇宙から地球表面に降り注ぐ宇宙線を観測するための科学施設だ。宇宙線というのはいろいろな種類の電磁波や素粒子のことだから、当然高速中性子線も捉える事が出来る。  時間は麻耶が国連ビルの屋根の上で演説をしてから約一時間。麻耶が「一時間後に分かる」と言ったのはこの事だ。  その円盤型粒子発生器はまず強烈な赤い光とキーーーンという派手な音を出して観測所の人間を表に引っ張り出し、空に奇妙な飛行物体がいる事を確認させた。気付いてくれないと意味がないからな。  それから、地表のあちこちに設置してある観測装置めがけて高速中性子ビームを発射した。観測所の人たちに当たらないようにラミエルが細心の注意を払って円盤を操り、観測機械にだけ中性子線を浴びせていく。  事が終わると、円盤はまた瞬間移動してその場から煙の様に消え失せる。後は観測所の科学者たちが観測装置のデータを調べて、何が起こったのか気がついて、あわてて政府やらどこやらに連絡して、そして世界中が大騒ぎになるだろう。  軍事専門家ならすぐ気がつくはずだ。これが中性子爆弾と同じ効果である事、そしてあの円盤が、国連ビルにいた宇宙人、まあ正体は俺の妹なんだが、の言っていた「最終兵器」だという事に。
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