第5章 全人類人質計画

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 そう、早い話が俺たちは国連を脅迫しているのだ。地球人類の降伏を要求し、さもなくば高速中性子線を世界中に降らせるぞ、とね。  もっともこれは多分にハッタリだ。あの円盤型の装置が中性子を放射出来るのはあと一回、十秒間だけだから。世界中を壊滅させるには時間が足りない。もっとも十秒一回の照射でも、大都市ひとつぐらいは無人に出来るとラミエルは言った。  俺たちの思惑は当たった。それから数時間後、国連事務総長が世界中のマスコミ相手に緊急記者会見を開き、俺たちが書いたシナリオ通りの発表を行った。それは全世界の新聞、ラジオ、テレビ、インターネットニュース、その他あらゆる形で世界中を駆け巡った。  俺たちは海中深く潜行しながら日本へ戻るラミエルの球体の中で、彼女のコンパクト型スパコンの画面でそれを見ていた。しかし、本当に国連が全人類を代表して降伏なんかするだろうか? 「しないと思うわ」  麻耶はあまりにもあっさり言った。俺はちょっと拍子抜けした。 「それでいいのか?」 「そしたらあの円盤をまた飛ばすのよ。それこそ世界中に出現させてね。もちろん中性子は降らせないけど、いつ殺人光線が空から降って来るか分からない、という状況に人間はそう長く耐えられるものじゃないでしょ?全面降伏させるのは無理でも交渉の糸口ぐらいにはなるかな、ってね」
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