第5章 全人類人質計画

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 俺はもう一つ気なる事があったので、今度はラミエルに向かって訊いた。 「なあ、あの屋根の上で、あの黒人のおばさんと何を話していたんだ?」 「あのご婦人はアフリカの貧しい国から国連に派遣されていて……わたしたちにお礼を言いたかったんだそうです」 「お礼?」  俺はあっけに取られて言った。地球を征服しに来たと演説している宇宙人にか? 「あの方の国は食糧不足が深刻で、他の国から毎年援助を受けていて、それでも毎年大勢の子どもが栄養不足で死んでいくのだそうです。麻耶ちゃんの演説を聞いて、よくぞ言ってくれた、とそう思ったそうです」 「そういや、あの時何か君に渡してなかったか?」 「はい、これです」  ラミエルはそう言って、愛おしそうに手の中に握りしめていた物を俺たちに見せた。色が付けてあるとはいえ、なんとも安っぽい金属のブローチだ。安全ピンで服に留めるやつ。  よく見ると表面に英語の単語が浮き彫りにしてある。上下に三つ並んだその模様はこう読めた。 Table for two
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