第1章 銀色の侵略者

12/18
前へ
/285ページ
次へ
 それにあの気の弱さ。侵略の対象である地球人の一人、つまり俺、にちょっと怒鳴られただけで「すいません」を連発する、おどおどした性格。どう考えてもよその星を侵略、征服するのに適任だとは思えない。  俺は思い切って尋ねることにした。 「それで、どうして君が選ばれたんだ?」  ラミエルは答える。 「図で説明した方がご理解しやすいと思うのですが」  そこで、俺のノートのページを一枚破いて、シャープペンとともに渡した。ラミエルはまず紙の上から下までまっすぐな直線を何本も引いた。 「本当はこの線が三十四万二千六百三十二本あるのですが、書ききれないですから、略図にしました」  と地球を征服に来た宇宙人。麻耶も興味を引かれたようで、横から上半身を乗り出してラミエルの描く図を見ている。  それからラミエルは縦線のあちこちに横線を書き入れ始めた。ううむ、何かの電子回路の設計図のように見える。横線は縦線二本ずつをあちこちでつなぎ、縦線を貫くことはない。ラミエルが上の縦線の一つに丸で印をつけた。 「それで、あとはこうやってですね」と線を下に向けて縦横になぞっていく。  彼女の手が止まった数秒後、俺はやっとその秘密の全てを理解した。そして近所迷惑も顧みず、思わず叫んだ。 「アミダくじ、じゃねえか、そりゃ!」
/285ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加