第6章 時を賭ける少女

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 俺のアパートに近くの公園に球体を着陸させ、俺とラミエルはルンルン気分で外へ足を踏み出した。そして二人そろってその場で固まってしまった。最初は何かはっきり分からなかった。が数秒でその違和感の正体が判明した。  いつも空を俺の視界から遮っていた高いビルがひとつも見えない!遠くには真っ黒い煙がもうもうと上がっている場所がいくつも見える。  俺たちは再び球体に乗り込んで近くの様子を空から確認した。そして思わず抱き合った。今回はあまりの驚きと恐怖のために、だ。  大都市東京は見渡す限り破壊されていた。高層ビルがあちこちで将棋倒しになっていて、東京タワーは真ん中からぽっきりと折れている。住宅街は比較的無傷に近いようだが、地面のあちらこちらに無数のジェット戦闘機や軍用ヘリコプターが墜落して炎に包まれている。  俺たちは比較的被害のない商店街に人がいるのを見つけ、そこへ降りてみた。誰かを捕まえて事情を訊こうとしたが、ちょうど途中の電器屋の店頭のテレビがニュースを流していたので、その必要はなくなった。テレビの画面に中ではアナウンサーが沈痛な表情で絶叫するようにこう語っていた。 「国民のみなさん。状況は日々悪化する一方です。一体この地球上の誰が、わずか三カ月前までこのような事態を予想し得たでしょうか?たった一人の女性型宇宙人のために、まさかこれほどの甚大な被害を世界中が受ける事になろうとは……」  それからテレビの画面には世界の主要都市の現在の状況が映し出された。ニューヨーク、ロンドン、北京、モスクワ……どこも今の東京と似たような惨状になっている。どうやら地球は陥落寸前の状況らしい。
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