第6章 時を賭ける少女

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「で、でも、君はアミダくじで選ばれたんだろ?偶然麻耶が同じアミダくじで選ばれる……そんな偶然があり得るのか?」 「時空連続体は人為的な改変に対して、つまり歴史を変えようとする動きに対して、変えられた部分を元に戻そうとする働きがあるという仮説があります。でも、わたしの星の科学でもそのあたりの事は詳しく分かっていません。でも、もしその仮説が正しいとしたら……」  俺は自分の考えがいかに浅はかだったか思い知った。麻耶にはもっと幸せな人生を、ラミエルには地球での静かな暮らしを、と願ってほんの少しだけ歴史を変えたつもりだったが、結果的に地球史上最強にして最悪の征服者を生み出してしまったのだ!  俺は一縷の望みをかけてラミエルに訊いた。 「あ、あのさ……今からまた過去へ戻って、すり替えられた赤ん坊時代の君と麻耶をまた元に戻すなんて……そんな都合のいい事は……」 「可能です!」  ラミエルはコンパクト型スパコンを見ながら、珍しく強い口調で言った。 「ただし、わたしたちの体感時間で十二時間、それがタイムリミットです!それを過ぎるともう歴史の再改変は不可能になります」  ならば取るべき道はひとつしかない。俺とラミエルは大急ぎで彼女の球体に駆け込み、再び十六年前の地球と十七年前の彼女の星を行ったり来たりして、赤ん坊時代の麻耶は地球の病院のベッドに、同じく赤ん坊時代のラミエルは彼女の星の新生児用カプセルに、元通りに戻してきた。  全てが終了したのは、ラミエルが言ったタイムリミットのわずか二分前だった。やれやれ、危なかった。
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