第6章 時を賭ける少女

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 地球へ戻る彼女の球体の中で、今度はラミエルが先に自分の変化に気付いた。艶やかな黒髪だったラミエルの髪が少しずつ元の紫色に戻っていく。どうやら今度のすり替え元に戻し作戦が成功した証拠のようだ。俺はほっとしたが、ラミエルは少し残念そうな口調で言った。 「あーあ、戻っちゃった……ずっと麻耶ちゃんの黒い髪にあこがれていたのになあ……フフ……ちょっとがっかりです」  地球の大気圏に入ると、俺たちは念のため地球軌道上を一周して何か変なところがないかどうか確かめた。どうやら大規模な破壊の跡はない。  東京上空からも地上の様子を念入りに確認した。高層ビルが倒れているところもないし、東京タワーは元の姿でちゃんと立っているし、大規模な焼け跡も見当たらない。いつも通りの気ぜわしい大都会の姿だ。  それを確認し終わって俺のアパートの近くの公園に着陸した時にはもう夕暮れが迫っていた。俺とラミエルが今回の時間旅行に出発してから二日目の夕方だ。球体から出たらどっと疲れが体中からあふれ出した。 「あーっ!そんなとこにいたあ!」  突然公園の入り口あたりから麻耶の怒鳴り声が飛んできた。俺たちの方につかつかと歩み寄りながら、頬をプンとふくらませて少し怒った顔をしている。 「もう、あたしに隠れて二人でこそこそどこへ行って何してたのよ?部屋には昨日からいないし、予備校にも行ってないっていうし、携帯もつながらないし。あたしに断りもなくラミちゃん連れてかないでよね!」
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