第6章 時を賭ける少女

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 よりによって帰ってすぐにこいつに出くわすとは……きっとどこで何をしていたか、根掘り葉掘り訊かれるだろうが、本当の事を話すわけにはいかない。そんな事をしたら、今度こそこいつに殺される。  俺が顔に引きつった笑みを浮かべて必死に作り話を考えていた、その時、俺たち三人の頭上で赤い球体が強烈な光を発した。目もくらむような光だ。 「ラミエル、何してるんだ!早く球体を仕舞ってくれよ。この辺は人通りが少ないって言っても誰に見られるか分からないぞ」  という俺の言葉にラミエルは大きく首を横に振った。 「いえ、違います……わたしのはちゃんとここに……」  確かにラミエルの手の中には、さっきまで俺たちが乗っていた球体が野球のボールほどの大きさに小さくなって載っている。だったら上の球体は何だ?  俺たちの頭上の球体から男の、それも老人らしきしわがれた声が降って来た。 「地球征服要員360号……任務の期限内遂行に失敗、さらにタイムマシンの目的外使用……軍紀違反とみなし、貴様を本星へ強制送還する」  そうか、しまった!赤ん坊すり替え作戦やっているうちにラミエルの任務達成の期限が過ぎてしまっていたんだ。  突然ラミエルの体が音もなく空中に浮いた。そして俺が止める暇もなく彼女の体は頭上の赤い球体に吸い込まれていく。
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