第6章 時を賭ける少女

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「早太さん!麻耶ちゃん!」と叫ぶ彼女の声が、まるで刃物で切り取られたかのように突然ぶつりと途切れ、ラミエルの体は完全に赤い球体の中に消えた。そして俺と麻耶が声を上げる暇もなく、その球体はあっという間に上昇し見えなくなってしまった。 「ラミちゃん!……ラミちゃーーーーーーーーーーん!」  麻耶がやっと悲痛な叫びを上げたが、もう手遅れだ。ラミエルは俺たちの前から突然いなくなってしまった。さよならの一言を言う時間すら与えられず。 「こんな別れ方なんて……ないよ……」  麻耶が薄暗がりの中で言う。 「さよならさえ言ってないのに……こんなの、ないよーーーーーーー」  そう言って麻耶は俺の胸にしがみついて、まるで小さな子供みたいに大粒の涙を流しながらいつまでも声を上げて泣いた。何年ぶりだろう。こいつが人前で泣く姿を見るなんて。俺は泣きじゃくる妹を抱いて頭をなでてやりながら、いつまでも球体が消えて行った方向の暗い空を見上げていた。  そうやって上を見上げていないと、俺の両目からもとめどなく涙の粒がこぼれてきて止まらなくなりそうだったから。
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