第9章 とろい木馬

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「もう、疲れているんじゃないの?この手の事は根をつめればなんとかなるものでもないわよ。今日のところは仮眠室に行って、もう寝たら?」 「は、はあ、そうですね。じゃ、そうさせてもらいます。お休みなさい」  俺はドアを開け、廊下の反対側の仮眠室へ行って眠りについた。  翌朝、防衛省内の食堂で朝飯を食べていると、桂木二尉が手に何か小さな物を抱えてルンルン気分で俺の方にやって来た。よく見ると、それはスナック菓子のおまけについているプラスチックの小さな人形だった。ずいぶん昔のリアルロボットアニメに出てくる宇宙兵器だ。いわゆる食玩というやつ。もういい年こいて、こんな物に凝っているのか、この人は。 「早太君、おっはよう!ねえねえ、これ見てよ!30個目でやっと出たのよ」 「何ですか、それ。ロボットじゃなくて宇宙船みたいですが?」 「だから、あのロボットを運ぶ宇宙戦艦よ。敵のイケメンのキャラが『木馬』って呼んでてね……」  次の瞬間、俺と二尉は同時にアッと叫んだ。俺はあやうく味噌汁を口から吹き出しそうになった。 「桂木さん!この前、何か新兵器が日本に運ばれてくると言ってませんでした?それも俺たちの作戦用の兵器が」 「それじゃ、木馬というのは、その輸送船の事だったわけ?」  その日は土曜日だったので、早速ラミエルと麻耶も防衛省に呼び出され、俺たち四人は会議室で頭を突き合わせていた。桂木二尉が言うには、それが何かはまだ教えられないが、俺たちの地球防衛作戦に必要な新兵器を積んだ輸送船がこちらへ向かっている、という事だった。今日の夕方には到着するらしい。
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