第9章 とろい木馬

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 かくして俺たち四人は二尉の運転する車で晴海ふ頭へ向かった。後ろから陸上自衛隊の深緑色の大型バンに乗った特科小隊の隊員が続く。ふ頭に停泊していたのは意外と小さな船だった。だが、前甲板にはちゃんと大砲もついている、れっきとした軍艦である事は俺でも一目で分かった。  まず俺たち四人が乗り込み、特科小隊の十人の隊員を麻耶が誘導して乗船させる。ブリッジには二人しか乗組員がいなかったが、これは秘密行動だからだろう。桂木二尉が見せた身分証を見た途端、その二人の海上自衛隊員の顔色が変わった。どうやら、俺たちのチームの特別な任務を知っているようだ。 「すぐに出航して!一刻を争うの!」  麻耶がそう叫ぶように言うと、彼らは大慌てで船のエンジンを始動した。滑るように船は岸壁を離れ海へ向かって進みだす。麻耶が桂木二尉に言う。 「それで、その輸送船は今どこにいるの?」  桂木二尉は腕時計を見ながら答える。 「あと二時間ほどで、横須賀港に着くはずだけど」  俺と麻耶は、同時に「横須賀?!」と叫んで、そのままあんぐり口を開いたままになった。はあ?その輸送船は東京港に向かっているんじゃないのか?今から横須賀へ向かって、この護衛艦が間に合うとは思えないが……麻耶が焦れたように叫んだ。 「ちょっと、桂木さん!これは護衛艦なんでしょ?」  なぜか二尉は不思議そうな表情で答える。 「ええ、もちろん護衛艦だけど?」  その時、桂木二尉のスマホが鳴り、何か大あわての口調で連絡が入った。それを聞き終わった二尉が俺たちに告げる。 「三十分ほど前、マクスウェルの魔女1号2号の姿が確認されたそうよ」
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