第10章 残酷な上司のテーゼ

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 桂木二尉は胸を反らして右手をまっすぐその物体の方へ伸ばし、俺たちに向かって高らかにこう告げた。 「これが来るべき異星人との戦いに備えて極秘裏に開発された、人類初の汎用人型決戦兵器、その初号機よ!」  二尉が言い終わらないうちに麻耶が服の背中に手をまわして、白く細長い物をすうっと取り出した。厚手の紙を蛇腹状に畳んで片方の根元をテープで巻いて留めた物。どつき漫才でよく使うハリセンてやつだ。麻耶はそのままそのハリセンを桂木二尉の頭のてっぺんに思いきり叩きつけた。パシーン!とほれぼれするほど見事な音がした。 「い、痛い、麻耶ちゃん。なにもハリセンでぶたなくても~」  その場に頭を抱えてうずくまった、その二尉の泣きべそには耳も貸さず、麻耶は機関銃のような口調で容赦なくしかるべきツッコミを入れた。 「どこに目ん玉つけて、どの角度からあれ見たら、『汎用』だの『人型』だのってセリフが出てくんのよ?!」  二尉は助けを求めるようにラミエルの腰のあたりに抱きついて、ひきつった笑いを顔に浮かべながら必死に麻耶をなだめようとした。 「いや、ほら、何年か前に政府の事業仕分けってあったじゃない。あれで、こいつの開発予算大幅に削られちゃったのよ。『どうして人類初でなきゃいけないんですか?二番じゃいけないんですか?』って言われて、うちの偉い人たち何も言い返せなくなっちゃってさあ」 「まあまあ、麻耶ちゃん。自衛隊さんにもいろいろ事情があると思うし……」  二尉を自分の背中に隠すようにしてラミエルも麻耶をなだめた。 「それに、わたしの惑星のテクノロジーをほんの少しですけど追加してあるから、見た目よりは強力な兵器になっているはずです」
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