第10章 残酷な上司のテーゼ

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「それで、あれに誰が乗るのよ?」  麻耶はかろうじて機嫌を直したようで、ハリセンを服の背中に中に戻しながら尋ねた。二尉がおそるおそる答えた。 「ええとね、早太君と麻耶ちゃんが一応テストで乗る事になっててね。ラミエルさんが手を加えているから二人が適任だって話になって」 「へえ。さっき初号機って行ったけど、じゃあ他にもあるわけ?」 「あなた専用の二号機があるわよ」  その声は俺たちの頭の上から突然降って来た。見上げると桂木二尉と同じぐらいの年頃のやはり女性の自衛隊士官らしい人が、一段上の通路から俺たちを見下ろしていた。 「そちらはまだ調整中だから、もう少し待っていて。ところで律子!」  その人は桂木二尉に視線を向けて少しきつい口調で言った。 「何をしてたの?人手もなければ時間もないのよ」 「あはは、ごめーん!ああ、あなたたち、あの人がこの機体の作戦主任の赤城美郷博士よ」 「とにかく早く演習場へ行って。試験運転が始められないわ」  その人に急かされて、俺たちは倉庫の入り口へ向かって歩いた。その途中、俺は二尉に聞いてみた。 「あの、桂木さん。さっきの人アカギ・ミサトって名前でしたっけ?」 「ええ、そうだけど。どうかした?」 「はあ、なんかお二人の名前並べてみたら、妙にどこかで馴染みのある名前のような気がするんですが」 「そう?二人ともよくある名前だからでしょ」
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