第10章 残酷な上司のテーゼ

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 とにかく俺たちは演習場の隅へたどり着き、そこへさっきの不格好なロボットが牽引車に引かれて運ばれて来た。桂木二尉とラミエルに説明を受けながら俺はそのロボットの操縦席に乗り込んだ。胴体の部分の中が操縦席になっていた。  狭苦しい操縦席のシートに座り、言われた通りヘルメットをかぶると耳元から二尉の声が聞こえてきた。どうやら無線装置がヘルメットに組み込まれているらしい。指示された通りに前の方にあるスイッチやボタンを操作すると、ブルルルという低いエンジン音がして機体が小刻みに振動し始めた。  目の前の大型スクリーンが明るくなり、外の光景が映し出される。頭部のカメラの映像だということだが、まるで大きな窓を通して外を見ているような感じだ。二尉の指示で前進、後退、方向転換などを一通り練習しなんとか動かせるようになったところで、50メートルほど離れた場所に巨大な四角いコンクリートの塊がジャッキで高く持ち上げられてきた。ヘルメットの通信装置から二尉の声が響いた。 「さあ、最後の仕上げよ。あれを必殺技で吹っ飛ばしてちょうだい」 「必殺技?それはすごいですね。で、どこにあるんです?」 「まず、そのロボットの右手で左腕の手首をつかんで。そのまま引っ張る」  言われた通りにすると、ロボットの左腕が人間で言えばひじの辺りからすぽっと外れた。その残ったひじの辺りから、先の方が急に細くなった銃身のような物が伸びていた。 「あの、桂木さん。仕組みは分かりましたけど、なんでこんな所に武器が収納してあるんですか?普通に肩のあたりとかについてりゃよさそうなもんですけど」 「さあ、それはまあ、いろいろ設計上の問題があるんでしょうね」 「まさかこれ、精神力で撃つ銃だとか言わないでしょうね?」 「あはは、それはないわよ。それがラミエルさんに手伝ってもらった反陽子ビーム砲よ。ただし、地球の科学力じゃやっぱり限界があってね。いい、今から非常用電源に切り替えるわよ」
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