第10章 残酷な上司のテーゼ

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 そして翌日の午後3時。俺たちがロボットの初号機を演習場に待機させて待っていると、マクスウェルの魔女1号が2号を横抱きに抱えた格好で空を飛んで現れた。俺たちの前の地面に音もなくふわりと降り立ち、魔女1号ことサチエルは初号機を見上げてふうっとため息をつきやがった。 「まあ、この惑星の文明レベルに期待はしておりませんでしたけど。まさかここまで原始的とは驚きですわ」  俺はあえて反論せず、心の中で思っていた。ふん、言ってろ。余裕こいていられるのも今のうちだ。なんたってこっちには反陽子ビーム砲という必殺技があるんだから。  俺たちの頭のすぐ上を轟音を立ててジェット戦闘機が旋回し始めた。念のため桂木二尉が航空自衛隊に応援を要請したそうだ。急だったので一機だけだが、F-14という型のジェット戦闘機が来てくれた。後ろの垂直尾翼が二枚あり、主翼は前後に動く可変翼というタイプ。俺の好きな戦闘機だ。まあ、今回は出番はないだろうが。  俺はロボットの操縦席に乗り込み戦闘用意を整える。サチエルはユミエルを抱きかかえて空中に浮き上がり、じっと上空のF-14戦闘機を見つめている。やがて上品に、しかし不敵に笑って俺たちに向かって言った。 「わたくしの超能力がパワーだけではないことを今日はお見せしますわ。ユミエルのテレパシーのサポートがあれば、物体の元素を操る事も可能でしてよ。お願いよ、ユミエル」 「はい、おねえさま」  そう言うとユミエルは目を閉じて精神集中に入ったようだった。サチエルが再び上空に視線を向けて片手をまっすぐ上に伸ばす。次の瞬間、ボンという音とともに何かが戦闘機の中から飛び出した。スクリーン越しにそれを見た俺はあっけに取られていた。
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