第10章 残酷な上司のテーゼ

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 サチエルはそう言って2号ユミエルを抱いてロケットのように空の彼方に飛び去って行った。俺は必死で二号機の中の麻耶に向かって叫び続けた。 「麻耶!麻耶!すぐ脱出するんだ!どうした麻耶、返事をしてくれええええ!」  数秒後、麻耶のどなり声が俺の頭の中全体に響き渡った。 「ああ、うるさいわね、もう!無線機通してるから、もろに耳に響くんだけど!」 「麻耶!無事なのか?」 「なんともないわよ。ちょっと桂木さん、どういう事?ランプが青のままであれ撃ったけど別に何ともないわよ」  へ? 「計器も全部正常だし」  は? 「別に警告音とかも鳴ってないし。エンジンの音も変わりないけど。どうなってんの?」  はあ? 「あら、おかしいわね。とにかく一度倉庫に戻って。初号機の早太君、聞こえる?どう?自力で動けそう?」  その桂木二尉の声に俺は力なく答えた。 「いえ、だめみたいです。エンジン止まってるし、操縦桿が反応しなくなってます」 「じゃあ、すぐに操縦席を出て。そっちは牽引車で運ばせるわ」
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