第10章 残酷な上司のテーゼ

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 十数分後倉庫に集まった俺たちは意外な事を二尉から聞かされた。二尉は何かを必死でごまかそうとする時のひきつった笑顔を万面に浮かべながらこう切り出した。 「あの……あはは、いえね、あれ別に胸のランプが青の時でも発射してかまわなかったらしいのよ……」  俺はけがはなかったが、体のあちこちが衝撃でズキズキ痛んでいた。俺は一応、この人の言い分を最後まで聞くことにした。 「じゃあ、なんで最初に赤に変わらないと撃てないと言ったんですか?」 「いえ、あたしもそう説明されていたのよ。いえね、あれを設計した科学者の皆さんがけっこう年がいってる人たちばかりでね。それでどういうわけか、胸のランプが赤に変わってからでないとあの必殺技は使えないと思いこんじゃったらしいのよ。ほら、子供の時の刷り込みってやつでさあ」  よし、そこまで聞けば充分だ。俺は服の背中からハリセンをすうっと引きぬいた。麻耶を見習って用意しておいて正解だったな。二尉をはさんで反対側に立っている麻耶も同じくハリセンを取り出しているところだった。俺と麻耶は両方から思いっきりそれぞれのハリセンを桂木二尉の頭のてっぺんに、息をそろえたかのように同時に叩きつけた。 「きゃあ!あーん、なにも二人がかりでハリセンでぶたなくても~」
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