第11章 劣情ロマンチカ

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「でも、それはあり得るかもしれないわね」  ここで桂木二尉が口をはさんだ。 「1から3ヘルツなら、デルタ波と同じ。睡眠時にだけ感じられる事の説明にはなるわ」  二尉の説明を簡単にまとめるとこういう事らしい。人間の脳から神経に伝わる信号も一種の電気信号だ。だから脳波もまた電気信号の一種とみなす事が出来る。  人間の脳波は周波数によって、アルファ波、ベータ波、シータ波、デルタ波に分けられる。このうち最も周波数が短いのがデルタ波で、帯域は1から3ヘルツ。自衛隊の通信部隊が検知した謎の電波の周波数と同じだ。  この4種類の脳波は、起きている時と寝ている時では現れる割合が違う。デルタ波はものすごく深い眠りに落ちている時にだけ脳波の半分以上を占めるらしい。つまり、もしラミエルの言う脳波転送説が正しければ、マクスウェルの魔女2号は眠っている人間の脳に夢を見させるという形で、何らかの思念を送り込んでいる事になる。  何のためにそんな事をしているのかは分からないが、その可能性がある以上何か手を打たないといけない。日本中なんていう広い範囲に電波を送っているとなると、その出所は間違いなく東京タワーのはずだ。  桂木二尉はさっそく自衛隊に東京タワー付近の捜索を頼んだが、しかし謎の電波の発信源らしき物は全く見つからなかった。以前に撮影したマクスウェルの魔女たちの顔写真を持って、俺とラミエルは街中で聞き込みをやってみる事にした。  通行人に写真を見せて「この二人を見かけた事はありませんか?」と片っ端から聞いてみるわけだ。昔テレビの刑事ドラマでよくあったシーンで俺は何となく自分がカッコよくなったような気がして浮かれていた。
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