第11章 劣情ロマンチカ

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 翌日、サンシャイン60ビルの周囲は自衛隊と警察によって封鎖され、念のため麻耶が乗り込んだ例のロボット兵器の赤い2号機がヘリコプターでビルのすぐ横の東池袋中央公園に空輸された。けっこうでかい機械だから安全につり下ろせる広い場所がそこしかなかったからだ。  公園の入り口近くに陣取った桂木二尉と俺が頭につけている無線機のイヤホンに麻耶の声が入ってきた。 「ああん。入り口に並んでる木、邪魔。ねえ、桂木さん、これ踏み倒していい?」  あわてて二尉が口元のマイクに答を返した。 「い、いや、できれば無傷で。まあ、それは敵が現れてから判断しましょ」 「その敵なら、とっくに現れておりましてよ」  頭の上から突然その声が降ってきて、俺と桂木二尉はビクっと飛び上がりサンシャインビルの方を見た。地上数メートルのあたりのビルの出っ張りにマクスウェル魔女1号ことサチエルが立って俺たちを見下ろしている。彼女たちも衣替えしたのか、今回は上は半袖の白いセーラー服、下は相変わらずひざが隠れるほど長い濃紺のスカートだった。  サチエルの背中の向こうには2号ユミエルがいた。同じ服装で、しかし床にひざまづいた格好で両手を胸の前で合わせ、目を閉じて祈っているような姿だ。 「来たわね!ようし!」  イヤホンから麻耶がそう威勢よく叫ぶ声が聞こえ、同時にロボット兵器2号機が動き出す。と、その時二尉が素っ頓狂な大声をあげた。 「ちょっと、あなた達!ここは今立ち入り禁止よ!」
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