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二尉の視線が向いている方向に目をやり俺も驚いた。サンシャイン60の周囲数百メートルは封鎖されているはずなのに、2人の中学生か高校生らしき私服の女の子がふらふらと公園の正面入り口から歩いて入ってきたからだ。いや、2人だけじゃなかった。いつの間にか公園の入り口が面している大通りに一人また一人と、同じような年頃の女の子が湧いて出てくるかのように現れる。
二尉は口元のマイクに向かって怒鳴った。
「ちょっと、封鎖班!何をしているの?未成年の一般人が大勢入り込んでるじゃないの!」
だが、返ってきた言葉は完全にパニックに陥った人間のそれだった。俺のイヤホンにも声が届く。
「それが……二尉、これは……う、うわっ!」
そのまま通信は完全に途絶えた。これはただごとじゃない。俺は迷い込んできた女の子たちを避難させようと、一番近くにいた子に駆け寄り肩をつかんだ。振り向いたその子の眼を見て、俺は背筋がぞっとした。それは明らかに正気の人間の目付ではなかった。
「ジャマヲ……スルナ」
異様に抑揚のない声でそう言った、背が俺の肩ぐらいまでしかない小柄な女の子の手が一閃した次の瞬間、俺の体は3メートルは後方に弾き飛ばされた。かろうじて倒れたりはしなかったが、これはどう考えても普通の女の子に出せる力じゃない。
公衆トイレの建物の陰に隠れていたラミエルが異常を察して俺に駆け寄ってきた。
「早太さん!大丈夫ですか?」
「ああ、なんとか。あの子たち、いったいどうなってるんだ?」
「きゃあ!早太さん、桂木さん、あれを……」
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