第11章 劣情ロマンチカ

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 ラミエルが指さす方向に視線を向けた俺と二尉は思わず息を飲んだ。サンシャイン60と公園の正面入り口に面する大通りはいつの間にか見渡す限り人影で埋まっていた。ほとんどが十代に見える少女たちの、もうこれは群れと表現していいんじゃないだろうか。二十歳を過ぎていると思えるおねえさんたちも多少混じっている。  彼女たちに共通しているのは、顔が能面の様に無表情でどこか視点が定まらないうつろな目付をしている事。そうだ、以前ドラマかなにかで見た夢遊病者みたいな感じだ。最初に公園に入り込んだ子たちが麻耶の乗る2号機の足元に群がり始めた。次々に公園に入ってくる少女たちが後に続く。  何がなんだか分からなかったが、俺はラミエルの手を引いて、公衆トイレの建物の上によじ登った。トイレと言っても結構立派な物なんで、人の二、三人楽に上に乗れる。桂木二尉も後からよじ登って来た。マクスウェルの魔女たちと十数メートル離れて同じ高さで向かい合う格好になった。  もうその頃には公園の地面は次から次へと押し寄せる少女たちで足の踏み場もないほど埋め尽くされていた。先頭の子たちはロボット兵器2号機のボディーをよじ登り始めていた。 「こ、この!」  俺たちのイヤホンから麻耶のいら立った声が響き、2号機が右腕を振り上げる。すかさず桂木二尉がマイクに向かってわめいた。 「だめよ!麻耶ちゃん!この子たちは民間人なのよ!」 「そ、そんな事言ったって……」  だが2号機は動きを止めた。いや止めざるを得なかった。俺はマクスウェルの魔女たちに向かって声を張り上げた。 「おい!これはおまえたちの仕業か?」
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