第12章 ブラッド・ピーッ

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 正々堂々と勝負というわけなので、自衛隊の大部隊を連れていくわけにはいかない。決戦場へ出向くのは桂木二尉、俺、ラミエル、そして麻耶のいつもの顔ぶれだけという事にした。と言っても、桂木二尉以外は自衛隊員ではない一般人なので、あ、まあラミエルは一般人というより宇宙人だが、武器を携行する許可は当然下りなかった。  一応全員陸上自衛隊の野戦服を着こんで、二尉だけが拳銃、自動小銃を持って二尉の車で夢の島公園へと向かった。夢の島というのは東京湾に突き出た、ごみの埋め立てで出来た土地だ。 なんか不潔なイメージがあったのだが、中は広々とした芝生の運動場や様々な種類の木がそこら中に生い茂っている、緑豊かな場所だった。  多目的コロセアムというのは公園の真ん中にある、直径数百メートルもある巨大なすり鉢状の窪地だった。コロセアムと言っても大理石の観客席に囲まれていたりするわけではなく、芝生と雑草に覆われた地面が広がっているだけなのだが、中央の一番低い場所に立つと、縁の部分のベンチを見上げる格好になった。  平日だし、6時の閉園時間を過ぎているので人影はなく、時折公園の外の道路を通る車の音がかすかに響いてくるぐらいで、やけに静かだった。東京の中では辺鄙な場所とはいえ、防衛省から10キロ足らずの距離にこんな場所がある事を俺は初めて知ってちょっと驚いた。  やがて木々の向こうに全面ガラス張りの植物園の屋根がのぞいている方角から、二つの人影が空から現れた。うち一つが見上げている俺たちの、向かって右手の窪地の縁にすっと降り立った。続いて左手側にもう一つ。  二人は今日は全身をすっぽり包む、大型のオートバイに乗る人たちが着るスーツを着込んでいた。向こうも戦闘用の服装というわけか。俺は二人を見上げながら思わずうなった。 「出たな。マクスウェルの魔女、1号と2号!」
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