第12章 ブラッド・ピーッ

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 二尉は銀白色のスーツケースを開き、中から試験管みたいな道具をいくつか取り出し、ラミエルの血液を吸い上げて何か調べ始めた。やがて俺と麻耶に怒鳴るように質問する。 「早太君、麻耶ちゃん!あなたたち、血液型は?」 「あ、あたしはA」  麻耶が面くらって反射的に答えた。俺も震える唇を噛みしめて答える。 「俺はBですけど」  二尉はプラスチックの細い容器から取り出した紙切れみたいな物を見つめながら言った。 「私はAB。ラミエルさんの傷はそれほど深くはないわ。でも出血がひど過ぎる。救援のヘリが向かっているけど、間に合わない可能性があるわ。そしてラミエルさんの血液型はB。この中で輸血出来るのは早太君だけね」 「今ここで、輸血出来るんですか?」  俺も我を忘れて大声で叫んだ。二尉はうなずきながら言った。 「万が一に備えて輸血用の機械は積んであるし、あたしは応急処置が出来る資格を持っている」 「だったら、すぐに、今すぐに俺の血を!何リットルでも必要なだけ!」 「早太君、よく聞いて!」  二尉はいきなり両手で俺の肩をわしづかみにした。俺は大げさでなく痛みで飛び上がりそうになった。それほど二尉に手には力がこもっていた。 「確かに検査キットではラミエルさんの血液型はB型と出たわ。でもね、早太君、彼女は地球人ではないのよ。地球人と同じ血液の構造をした生物なのかどうか、それはここでは分からない。この意味が分かる?」 「あっ!」 「血液細胞の構造が異なる者同士で輸血をしたら、死亡する可能性が高い。でも、このままではどのみちラミエルさんは助からない可能性も高い。だから……これは賭けなの。それもとても危険な賭け。それでも……」 「やって下さい!」  俺は二尉の肩をつかみ返して叫んだ。 「助かる可能性があるのなら、賭けでも何でもいいから、だから!だから!」
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