第12章 ブラッド・ピーッ

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「分かったわ」  二尉は静かにそう言うと、輸血用のチューブで俺とラミエルの腕をつなぎ、輸血を開始した。数分後、うす暗くなった空に俺たちに向かって飛んでくる自衛隊のヘリが見えた。とりあえず俺の血を輸血されたラミエルは、担架に乗せられてヘリで運ばれて行った。  自衛隊の別のバンがその場に到着し、気を失ったままのサチエルとユミエルを運び去って行った。俺は大量に血液を失ったせいか、しばらく地面に座り込んだままぼんやりとその一連の出来事をながめているしかなかった。不意に後ろから俺の肩をポンとたたいた手があった。桂木二尉だった。 「さあ、本省へ戻りましょう。ラミエルさんがどうなるにしても、全てはそれからよ」  それから二時間後、俺たちは都内にある自衛隊中央病院にいた。ラミエルは生きていた。だが、異常な高熱を出してベッドの上で気を失ったまま、時々苦しそうなうめき声を出していた。ベッドのそばの椅子に座り、ラミエルの手を握りしめながら、俺はどうする事も出来ないでいた。  横から桂木二尉が俺を慰めるかのように言葉をかけてきた。 「脈拍や心拍数、血圧は心配ない程度まで回復しているわ。ただ、この高熱と体の変調の原因が分からないの。地球人の血液ではやはり合わなかった……その可能性も否定出来ない」  俺は無言でラミエルの手を握り続けた。ベッドの反対側では麻耶が座ってラミエルの様子を食い入るように見つめている。二尉の「今日のところは帰ったら?」という言葉も、俺たちの耳には全く届かなかった。二尉はあきらめたように、無言で病室から出て行った。
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