第12章 ブラッド・ピーッ

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「こ、この!」  椅子を蹴倒して飛びかかろうとする麻耶を二尉が立ちふさがって止める。 「まあ、落ち着いて、麻耶ちゃん。この子たちには、本気で地球人を傷つけるつもりはなかったのよ。ラミエルさんが大けがをしたのは彼女たちにとっても計算外のハプニングだった」 「なんでそんな事が分かるのよ?」 「これよ」  そう言って二尉は自分の机のパソコンのモニターの向きをくるっと俺たちの方に向けて、俺たちを手招きした。 「このデータをよく見てごらんなさい」  俺がのぞいて見ると、それはこれまでのマクスウェルの魔女たちとの戦いで生じた被害の一覧表だった。二尉が指差した所には「人的被害」とあった。軽傷11名、重傷者1名、そして死者ゼロ……えっ! 「死者がゼロ?そんな馬鹿な!あれだけの被害が出たのに、ですか?」  麻耶とラミエルもそれをのぞき込んで驚きの声を上げた。二尉がいつものすっとぼけたニコニコ顔で続ける。 「そう、あり得ないわよね、普通は。ちなみにその重傷者1名というのはラミエルさんの事よ。つまり彼女たちは、ド派手な戦いを仕掛けて繰り広げながら、死人や重傷者が出ないように注意深く被害をコントロールしてたわけね」  そうか!ラミエルが大けがをした時、それを見たサチエルは異様に動揺して、それで超能力の効き目が極端に弱くなった。だが、なぜだ?俺は直接マクスウェルの魔女1号2号に質問した。 「どういう事なんだ?征服する星の人類になぜそんな気を遣った?」  1号サチエルが床に目を落としたまま小声で答えた。今まで見て来た、自信たっぷりで冷笑的な彼女とは別人のように気弱に見えた。 「わたくしたちだって、好き好んで他の星を侵略だの征服だのしたいわけではありません。故郷の惑星の政府の命令で仕方なく」
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