第12章 ブラッド・ピーッ

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 2号ユミエルはまっすぐに俺たちの方に視線を向けて、訴えるように言った。 「おねえさまは、本当は心の優しい方なんです。わたしだって、政府の方針には反対でした。でも拒否する権利はわたしたちの惑星では、ないんです」  そうか。ラミエルだって、アミダくじで選ばれて無理やり送り込まれたんだったな。そういう意味では、ラミエルもこの二人も、被害者と言えば言えるのかもな。  すると桂木二尉はサチエルとユミエルに歩み寄り、突然とんでもない事を言い出した。 「あなたたち、地球に亡命する気はない?そりゃ、あなたたちから見れば原始的な文明の惑星でしょうけど、この星には未来があるわ」 「ちょっと、桂木さん!」  麻耶が俺たちの意見を代弁するかのように怒鳴った。 「そんな重大な事を独断で決めていいわけ?」 「あら、私の独断じゃないわよ。防衛大臣は了解してるし、日本政府も彼女たちがオーケーと言えば受け入れる方針よ。ついでにまだ非公式だけど、国際連合にもその線で働きかけてるのよ」  サチエルはすがりつくように二尉の手をつかんで涙声で言った。 「そんな事が許されるんですか?」  二尉が答える。 「ええ。ただし、あなたたちの惑星の地球征服計画についてはいろいろ情報を提供してもらうわよ。まあ、地球防衛に協力するなら、という事で。それが条件よ。どう?」
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